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事務所ブログ
欠損金の税務メリットを、買収価格にどこまで乗せてよいか――プロコンを尽くさないまま進めると、無理筋の要求も飲まざるを得なくなる
はじめに M&Aの価格交渉では、対象会社が抱える繰越欠損金の扱いがしばしば論点になります。「欠損金には将来の節税価値がある」という理屈自体は間違っていません。ただし、それが成立するのは誰と誰の間の取引かによる、というのが今回お伝えしたい実務上の教訓です。また、交渉の進め方という観点でも示唆に富むケースなので、あわせて整理します。筆者が実務で見聞きした、ある企業グループの合弁会社をめぐる株式買い取り交渉の事例をご紹介します。 1.A社側から買い取りを持ちかけた話 B社(S社の親会社として経営の主導権を握っていた会社)とA社は、S社という会社に共同で出資していました。A社にとってS社は、持分法を適用する関連会社という位置づけです。 以前、B社側からS社株式を手放したいという打診があったことがありましたが、その際は条件が折り合わず見送られていました。今回は逆に、A社側の受注が伸び、既存の生産能力だけでは対応しきれなくなったことをきっかけに、A社側からS社株式の買い取りを持ちかける形で話が動き出しました。 2.プロコンを尽くさないまま、言い値を飲んでしま
5 日前
内部監査の「担い手」はどこにいるのか――逆ピラミッド組織と、儲からない部門というジレンマ
はじめに 内部監査の担い手不足は、比較的規模の小さい上場企業でも、中小企業でも、程度の差こそあれ共通して抱えている問題だと感じています。内部監査は会社の規模にかかわらず必要な機能ですが、そこに人を割ける会社は多くありません。 今回は、銀行員時代・その後の企業内会計士としての経験から見えてきた、内部監査の人員資源が置かれている構造的な事情と、その中でも実際に機能させるための工夫についてお伝えします。 1.銀行や大企業で見てきた「配置換え」としての内部監査 銀行にいた頃、支店長を経験した人が、次の出向先や異動先が決まるまでの間、検査部門に籍を置いて臨店検査を担当するという光景をよく目にしました。ポストが空くのを待つ間の「つなぎ」的な配置ではありましたが、支店運営を実際に経験してきた人が検査に入ることには合理性がありました。現場のどこに無理が生じやすいか、どこを見れば実態がわかるかを、経験的に把握しているからです。 大企業でも同様の傾向があります。マネジャー層が本来の業務と内部監査を兼務したり、ベテラン層を内部監査部門に配属したりする例は珍しくありませ
9月7日
万年赤字の親会社が、国際税務の「課」を育てなおした理由――専門家との橋渡し役という立ち位置
はじめに このシリーズでは、海外進出の各段階で顕在化したPE認定リスクと移転価格税制の論点を、5つのケースを通じてお伝えしてきました。出張所の役割変質(第1回)、限定的リスク事業者の赤字(第2回)、調整金の方向転換(第3回)、バイセル化後の損益シェアを巡る対立(第4回)、税務上の対価と管理会計の分離(第5回)。最終回となる今回は、これらの技術的な論点そのものではなく、これまでとは別の企業のケースを通じて、こうした論点を継続的に発見し、是正していく「体制」をどう作ったかについてお伝えします。 本シリーズは実際の複数の案件で見えてきたパターンを一般化・匿名化してご紹介するものです。 1.背景:関心の薄さという構造的な問題 このケースでの日本の親会社は、長年にわたって赤字が続いている会社でした。かつては海外子会社との取引を専門に扱う国際税務の担当機能もあったのですが、業績が芳しくない状態が続くなかで、「個々の取引をそこまで細かく見張る必要はない」という受け止め方が社内に定着していきました。実際、この会社には、国際税務に詳しい人材がほとんど社内にいない状
8月31日


利益が減るのを嫌がったとき――税務上の移転価格と管理会計の分離
はじめに 前回までの4回では、PE認定リスクと移転価格税制という、それぞれ単独でも論点になりうるテーマを扱ってきました。第5回は、これらとは少し異なる角度から、移転価格税制への対応が社内の力学とぶつかったケースをご紹介します。 本シリーズは実際の複数の案件で見えてきたパターンを一般化・匿名化してご紹介するものであり、個別具体的な税務判断は登録税理士・国際税務専門家との連携を前提としています。 1.背景:兄弟法人が担う事業と、代理人PE対策 日本国内の事業会社A社の海外事業を、共通の親会社P社の傘下にある現地法人G社(A社とは親子関係ではなく、P社を共通の親会社とする兄弟会社の関係)が担っている体制がありました。A社関連の事業をG社が扱うようになったのは、P社によるA社のM&Aがきっかけであり、G社では従来からの親会社P社自身の事業に、このA社関連の事業が加わる形になっていました。両者は性質の異なる事業であり、移転価格税制上、別個の取引として捉える必要があります。 A社関連の事業のうち、部品についてはこの体制に入った当初からバイセル(仕入れて売る)
8月24日
業績悪化時の移転価格の問題――限定的リスク事業者と損益シェアの境界線
はじめに 前回は、黒字化した海外子会社への調整金の支払方向が逆転したことで、進出先国の関税当局が求める調整金フォーマットという新たな論点に直面したケースをご紹介しました。第4回は、コミッション取引からさらに一歩進み、バイセル(仕入れて売る)形態へ転換した後、事業の業績悪化にともなって、海外子会社がどこまで損失を分担すべきかが問題になったケースをご紹介します。 本シリーズは実際の複数の案件で見えてきたパターンを一般化・匿名化してご紹介するものであり、個別具体的な税務判断は登録税理士・国際税務専門家との連携を前提としています。 1.背景:代理人PEリスク回避のためのバイセル化 現地子会社による販売支援活動が、価格・納期等の交渉に実質的に関与するような内容に踏み込んでいた案件で、代理人PEと認定されるリスクが懸念されました。現地子会社の従業員が本社に代わって顧客対応を行い、その活動が契約締結に直結していると評価されれば、当該子会社が本社の代理人PEを構成すると判断される可能性があります。この論点を解決する一つの方法として、コミッション取引から、子会社が
8月17日
調整金の流れが逆転した日――関税当局が求める調整金フォーマットの非対称な運用
はじめに 前回は、コミッションエージェントとして位置づけた海外子会社が恒常的に赤字を続け、原因を料率設定の低さに絞り込んだうえで、期末調整金でその場をしのぐのではなくコミッション料率そのものの見直しを提案したケースをお伝えしました。第3回は、これとは別のケースとして、機械のセットアップ業務はコミッション、保守用の消耗部品販売はバイセルという二本立ての体制を採っていた海外子会社が、事業拡大に伴って黒字化したことで調整金の支払方向が逆転し、思わぬ関税上の壁に直面したケースをご紹介します。 本シリーズは実際の複数の案件で見えてきたパターンを一般化・匿名化してご紹介するものであり、個別具体的な税務判断は登録税理士・国際税務専門家との連携を前提としています。 1.背景:機械はコミッション、消耗部品はバイセルという二本立て ある海外子会社は、親会社が製造する機械の現地での据付・セットアップ業務についてはコミッションエージェントとして位置づけられ、コミッションフィーを受け取る一方、その機械の保守に使う消耗部品(比較的頻繁に交換が必要となる部品)については、親会
8月10日
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